用語集

社内/社外ベンチャー制度(コーポレート・ベンチャリング)とは、硬直化した既存の組織では難しい、新しい有望な事業を育てるための制度です。

製品や市場のライフサイクルが短くなる中で、企業の生き残りと成長にとって新製品や新規事業の開発など、イノベーションがますます重要になっています。社内ベンチャー制度は、硬直化した既存の組織では難しい、新しい有望な事業を社内で育てるための制度です。特に大企業では、規模の大きさゆえに柔軟性や機動性を発揮できないという問題を抱えていますが、小規模単位の組織(チーム)に社内ベンチャーを任せることによって、イノベーションの芽を増やすことができます。社内ベンチャー組織には、まるで独立企業のように予算と大幅な権限が与えられます。社内ベンチャーを有効に機能させるには、なんといっても卓越したリーダーシップとマネジメント能力を併せもつ人材が欠かせません。

また、社内ベンチャーを育成する場合の障害となる既存事業からの干渉を避けるため、優秀な人材を社長に抜擢して、社外に独立させて新規事業を起こすことを、社外ベンチャーと呼びます。

社内ベンチャー制度

メリットとデメリット

メリット
  • 新製品や新規事業が生まれる土壌を作ることができる。
  • チャレンジ精神や企業家精神を従業員に芽生えさせる。
  • 本業を活性化させる刺激となる。
デメリット
  • 短期間で成果を上げることを期待されやすい。
  • そもそもベンチャー成功の確率は低く、建設的な成功体験となりにくい。
  • 既存事業部門からのバックアップが得られないことがある。

事例

欧米において、成熟期に入りつつある巨大な本業の脱成熟化をはかり、社内ベンチャーを位置づけているケースがあります。

  • IBMがパーソナル・コンピュータ(PC)に進出する際に用いた「特別事業単位」
  • ゼロックスがオフィス・オートメーションへの神鬼事業展開の拠点として、電子タイプライターの開発を通して全社に普及させた「戦略事業単位」
  • コダックの「新機会開発部」
  • ノキアの「ノキア・ベンチャー組織」
  • 3M(ミネソタ・マイニング・アンド・マニュファクチュアリング)の「4セクター制度」

日本においては、ぴったり対応するケースを見つけることが難しいのですが以下の例が社内ベンチャー的な取り組みとして知られています。

  • ソニーのプレイステーション事業
  • NTTドコモのiモード事業
  • 文具メーカーのプラスから生まれたアスクル
  • 大阪ガスの新分野開発部

社外ベンチャー制度

メリットとデメリット

メリット
  • 独立性が確保され、本社の影響が排除できる。
  • 既存の制度にとらわれない新たな制度や戦略を実施できる。
  • 失敗しても本社の経営に影響を与えることが少ない。
デメリット
  • 能力のある優秀な人材は社外に出ることを嫌がる。
  • 成功しても本社の人事評価に反映されにくい。

カーブアウト

大企業の中核的事業ではない事業を社外に切り出すことで、その事業の成長を促す「カーブアウト」と呼ばれる手法も、過度な多角化と多数の事業を進める日本の大企業にとって注目されています。この場合、事業を外部に切り出すことで、第三者の評価が得られ、社外からの投資参加を通して、事業化が促進されることがメリットと言われています。