組織や個人がマーケティング活動を実行していくうえで持つ基本的な考え方や姿勢をマーケティング・コンセプトといいます。
変遷
企業というものは、時代や経営環境にあった「市場に対する理念・考え方」に基づいて経営活動を行なっています。この「市場に対する理念・考え方」、言い換えると「マーケティング・コンセプト」はアメリカにおいて、以下の順に変遷してきたと言われます。
- 生産志向
- 販売志向
- 顧客志向
- 社会志向
生産志向とは、需要が供給を上回っていた時代での、マーケティング・コンセプトです。
生産志向の基本は、シーズ志向(「はじめに製品ありき」)です。このコンセプトのもとでは、経営者は生産に大して経営努力を集中することになり、生産性を高めていかに効率良く製品を生産するか、ということが中心的な課題でした。
アメリカにおいては19世紀末から1930年頃まで支配的なコンセプトでした。
※製品やサービスのみに目を奪われて、消費者ニーズを見逃してしまい、市場機会や競合企業を適切に評価できなくなる状態を「マーケティング・マイオピア」と呼んでいます。マイオピアとは近視眼という意味で、企業が自社のマーケティング上の使命を物理的に狭く解釈しすぎて変化への対応力を失ってしまうことです。この「マーケティング・マイオピア」はレビットによって提示された概念で、企業は自社の使命を物理的な製品そのものでなく顧客の欲している機能面からとらえるべきとするものです。
販売志向とは、標準化された製品を大量生産することが可能になった段階での、マーケティング・コンセプトです。
このコンセプトは、起業の技術を生かした製品を生産し、市場でその是非を問うというプロダクトアウトといった考えが前提となります。大量生産された製品を積極的に販売することに力点が置かれ、セールスマン・シップや販売促進の重要性が強調された考え方です。
アメリカでは1930年頃から1950年頃まで支配的なコンセプトでした。
顧客志向とは、供給が需要を上回り、企業間の競争が激化した、いわゆる成熟市場におけるマーケティング・コンセプトです。
このコンセプトは、消費者の集合である市場のニーズを探り、それに合致した製品を開発して市場に提供するというマーケットイン(ニーズ志向)という考え方が必要になります。
この概念は、1950年以降、中心的になってきたもので、ここに至って本来の意味でのマーケティング・コンセプトがはじめて登場したといえます。
社会志向とは、企業のマーケティング活動は、その企業の利潤の増大だけでなく、社会全体に与える影響までも考慮したものでなければならない、という考え方です。
このコンセプトは「起業の利益」と「消費者の欲求」と「社会の利益」の3つをバランスよく追求することの重要性を提唱しています。なお、この社会志向に基づくマーケティングをソサエタルマーケティングといいます。
1960年代の消費者保護運動(コンシューマリズム)をきっかけに登場したコンセプトです。
このような顧客志向や社会志向といったマーケティング・コンセプトを企業の対市場接近の基本としてとらえ、そのニーズの充足のために市場に対するしくみ作りを行い、そのしくみの市場実践を行うことが重要です。ここで明らかなことは、市場における顧客ニーズこそが重要であり、マーケティングはこの需要を創造・開拓し、拡大することを目標としていることです。
英語
Marketing Concept